目録に於けるもう一つの特徴は小具足にあります。伝書上「小具足身除之位」として位置付けられています。これは天然理心流剣術の特徴の一つと言ってよいものだと思いますが、切紙で出てきた「柄砕」などの柔術的な技術とは違い、明確に剣術のやり取りの中で使われることを意識したものになっているように思います。
初めは簡素な入身のような「鍔返」から始まります。相手の肘を自分の肘で挟むような創作技などでは決してありません。そして「鍔返」の次に、この入身から派生するように「横附」という投げ技を学びます。そして後にその「横附」に対する返しや、そこからの追撃技への展開があったり、また、「取返」という四つになる組技を切り口にした「五輪返」やその派生の「捨身返」のような技に展開するなど、一連の流れの中での柔術の巧妙なやり取りを学べるようになっているように思います。
小具足とは言うものの、小太刀から太刀(史料記載儘)へ使用する道具が変化していくような構成になっています。このことからもわかるとおり、ここでの小具足の技は、太刀で行われる接近戦をイメージしたものになっており、形の動きとしても、相手の刀を持つ手をコントロールすることが全ての技の中で意識されていることが見て取れます。
これらは、どちらかが無手であったり、小太刀である状況を想定したものではなく、双方刀を持った状態で、そのやり取り中で起こり得る、例えば鍔迫り合いのような状況を想定したものであると考えられます。
目録では最後に「行心」という謎の極意が示されることになりますが、この「小具足身除之位」は、これらの表面上に見られる技以外に、この重要な要素が表現されている可能性が高いように思います。
それは気持ちの問題ではなく、天然理心流としての必須事項である理念であり、身体操作の表現でもあると考えています。このことは小具足で顕著になりますが、目録の教えの中でそれは一貫したものであり、さらに切紙の形へもフィードバックされ、中極位に展開されていくものと考えられます。
目録の内容は撃剣ととても相性が良く、そのために構成されているのではないかと思うほどです。この使い勝手の良さを利用させていただいています。