天然理心流は切紙、目録、中極位、免許、指南免許、印可という流れで修業段階を進んでいきます。
切紙では、表木刀に始まり、陰橈、試合口、柄砕、鐺捌、奏者、柄之事、先之事、應之事、草位などが伝書の項目に挙がってきます。一部表記されている形の覚書を読むに、組太刀では打ち込み、受けを繰り返しながら、技や体を練っていく体系のように読めます。柄砕、鐺捌、奏者は帯刀する者が抜刀を邪魔された時の対処法のような柔の業です。
目録では、実際的な雰囲気の中で、太刀での基礎的な仕掛け技を四本習得していきます。その他に小具足身除之位という小太刀や太刀を持ちながらの柔術技が七組あります。これはとても簡単な内容から、少しずつ複雑な過程を踏んでいくようにできているように見えます。また、目録では行心という秘訣が出てきます。これは秘する事と伝書に書かれており、大分大事な内容だったことが伺えます。
中極位では徐々にトリッキーさが出てきて、様々な構えをとり、刀身の中程を取ったり、片手打ちをしたりと、バリエーションに富んだ内容になっていきます。中極位は内容豊富で、ここでも柔術の業が七組出てきます。また、伝書の初めには切紙で出てきた表木刀、陰橈、柄砕、鐺捌、奏者などの項目が再登場しており、表木刀には気術を付与したとの文言が出てきます。このことは中極位で何らかの要素が加わることで上位のものに発展していることが伺えます。その他に居合九本、立合三本があり、柄砕などと合わせて修業していたように想像します。
免許では首の刈り方や無刀入身があったりします。組太刀は動きの順番をみるだけなら、中極位に比べると割とシンプルな印象ですが、そこには柔術の要素が合わせられており、天然理心流の特徴ともいわれる剣柔の一体がより体現されているように見受けられます。
天然理心流では「浮鳥之位」という荒波に漂う水鳥の様子を極意として表現しています。このことについて、丸太を水に沈めても浮いてくる様子や、柳が雪にたわんで折れない様子を極意としている他の流派と同じことを、天然理心流ではこう言うという主旨が、印可の文書の中で師と弟子の会話のやり取りという形で示されています。
これを見るに、天然理心流の求めるところは単なる剛剣という印象のものではないように思えます。